行政書士法人INSIGHT
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事業協同組合専門の行政書士事務所
●組合員の加入と脱退
[加入]
組合への加入とは、組合設立の際に、組合員資格を有する者が組合員となることをいうの
ではなく、組合成立後において、組合員資格を有する者が組合員となることをいいます。加入
は組合と組合に加入しようとする者との間で締結する契約であり、加入しようとする者の加
入申し込みという意思表示とこれに対する組合の承諾によって成立します。
◆加入の自由
組合員資格を有する者が組合に任意に加入し、組合員が任意に脱退することができるとする「加入・脱
退の自由」は組合の基本原則の一つです。協同組合は相互扶助の精神をベースとする人的結合体である
ことから、来るものは拒まず、去る者は追わずの門戸開放且つ機会均等の趣旨が採られています。した
がって、組合員資格を有する者の加入は、加入の意思を伴う限り、組合は原則としてこれを拒むことはで
きませんし、加入の意思がない者を強制的に加入させられることもありません。しかしながら、組合が相互
扶助の精神の下、組合員の社会的・経済的地位の向上を図るために共同して事業を行う一事業体である
以上、その事業を円滑に展開していくためには、組合の趣旨に賛同の上、組合運営に積極的に協力・参
加し、組合事業を後押してくれる事業者を組合に迎える必要があります。志を同じくする同士が相寄ると
ころに組合は存立するものといえます。したがって、加入にあたっては組合の運営を鑑み「正当な理由」
がある場合に限り、加入を拒否することが許されるものと考えられています。
◆加入の手続き
加入は、組合と組合員資格を有する者との間で締結される契約であるため、加入の申し込みと、これに
対する組合の承諾を要します。
▼加入の申し込み
加入の意思表示には、「加入申込書」を組合に提出することにより行います。原始加入の場合はこれだ
けで良いですが、組合員の持分譲渡による譲渡加入の場合には、あらかじめ譲渡する組合員から組合へ
「持分譲渡承認願」も提出してもらいます。また、相続加入の場合は、死亡した組合員の持分を相続した
旨を「相続による加入申込書」を提出することになります。
▼組合の承諾
組合が行う加入の承諾は、理事会における議決で足りる。(ただし協業組合の場合は、総会の特別決
議が必要)原始加入の場合は承諾後、加入申込者の出資払込の完了をもって組合員としての地位を取
得する。なお、定款条文に記載の「地区」又は「組合員の資格」に該当しない事業者から加入申し込み
があった場合は、理事会で加入の承諾がなされた後、該当する定款条文の変更を行うべく定款変更認
可申請の手続きをし、認可が下りた後、加入申込者の出資払込の完了をもって組合員としての地位を
取得することになります。
[脱退]
脱退とは、組合の存続中に特定の組合員が組合を脱し、その組合員としての地位を喪失
することをいいます。組合は組合員の人的結合体ですが、組合の構成員として不適格になっ
たり、組合に留まることを欲しないようになった場合は、法律の規定により当然に、若しくは
当該特定の組合員の意思表示によって組合を脱退することができます。
◆自由脱退
自由脱退とは、組合員が相互扶助の精神を失い、あるいは、共同して事業を行う必然性がなくなり、
組合との契約を解除することで、組合員の一方的な意思表示のみによって脱退することができ、組合の
承諾は必要ありません。ただし、いつでも意思表示によって脱退することができるわけではなく、脱退の
時期は事業年度の終了時になります。脱退の時期を年度末としたのは、随時脱退を認めると、脱退に伴
う出資持分の払い戻しによって、組合財産が減少し、その年度における事業計画の遂行に支障を来す
恐れが生じ、他の組合員はもちろん、ひいては組合と取引を行う第三者の保護にも欠くことになりかね
ないためです。
▼自由脱退における予告の義務
組合員が脱退しようとするときは、あらかじめその旨を組合に予告する義務があります。予告すべき
期限は事業年度末日の90日前までです。(この予告期限を短縮することはできませんが、定款で1年
以内を限度として延長の上、定めることはできます。)したがって、この期限後に脱退の予告をした場合、
当該年度ではなく次の事業年度末日でなければ脱退は認められません。なお、脱退予告を行った組合
員は事業年度終了日までは、組合員の地位を失っていませんから、組合はその組合員に対しても年度
に開催される総会の招集通知を発し、また、共同事業を利用させる等、他の組合員と同じ扱いをしなけ
ればなりません。また、その組合員は他の組合員と同様に総会における議決権を行使する権利を有し、
賦課金や手数料その他の経費を負担する義務を負います。
◆法定脱退
組合員の意思のいかんに関わらず、法律に定める4事由のいずれかに該当するに至ったときは、組
合員は直ちに組合員たる資格を失い、組合を脱退することになります。したがって、その事実が発生した
時点において組合員は当然に脱退するのであって、自由脱退のように事業年度末日に脱退するのとは異
なります。
(1)組合員資格の喪失
組合は、組合員としての資格を有する者のみに加入を認めている団体であるため、組合員が法
律又は定款で規定された組合員の資格要件を失ったときは、当然に組合を脱退することになります。
したがって、組合員は常にこの資格要件を充足するものでなければなりません。
(組合員の資格要件)
①法律に規定する中小事業者であること
②定款に規定する資格事業者であること
③定款に規定する地区内の事業者であること。以上大別すると3要件があります。
(2)死亡または解散
自然人たる組合員が死亡したときは組合員不在となるため、当然に脱退となります。なお、脱退
の効力が発生するのは、死亡した日であり、組合が死亡の事実を知った日ではありません。また、
民法上の失踪宣言を受けた者も法定脱退に該当します。組合員が法人である場合には、解散
(破産による解散を含む)が当事由に該当し、当然に脱退となります。
(3)除名
除名とは、組合員の意思のいかんに関わらず、組合が一方的に契約を解除し、その組合員とし
ての地位を剥奪することです。組合員が組合員としての義務を履行せず、あるいは、組合員が組
合の存立に重大な影響を与える行為を行ったときは、組合はこれらの組合員を除名することがで
きます。したがって、除名はその組合員にとって極めて深刻な問題であること、または、組合の
一部の者による専制のために使用されることを防止するために、除名に該当する要因及び除名の
手続きについて、次のように定められています。
①長期間に亘って組合の事業(施設)を利用しないこと
②出資の払込みや賦課金、利用料等の経費の支払いなど組合に対する義務を怠ったこと
③その他定款で定める事由に該当する組合員を除名することができます。例えば、組合の存立に
重大な影響を与えるような場合、すなわち、組合事業の不正利用や組合運営の妨害、犯罪その
他組合の組合の信用を失墜させるような行為など、具体的に定める必要があります。
④除名は総会において特別決議により承認されなければなりません。しかも、総会の会日の10
日前までに除名しようとする組合員に対して、除名理由及び総会において弁明する機会がある
旨を通知する必要があります。この手続きを怠ると決議取り消しの訴因となり、理事に罰則が
適用されてしまいます。
⑤除名による脱退は、除名事由の発生をもって生じるのではなく、総会の議決がなされた時に脱
退となります。しかしながら、除名の効力はそれによって生じるが除名した組合員にその旨を通
知しなければ、これをもって除名組合員に対抗することはできません。
(4)公正取引委員会の排除審決
組合員は小規模な事業者でなければならないが、小規模であるか否かの判断は、最終的には
公正取引委員会の審決を待たなければなりません。